主張と見解

食品表示基準(案)についての意見


新日本婦人の会中央本部

【基本的意見】
食品は毎日食べ、いのちと健康に直結するものです。食品表示法の「基本理念」には「消費者の安全と消費者の自主的な選択の機会が確保され、必要な情報が提供されることが消費者の権利」と定めています。今後策定される新食品表示基準は、基本理念の実現と、だれにとっても分かりやすいものにすることが最重要課題であり、食品の安全に関する情報だけでなく、消費者が知り、選択できる表示にすべきです。しかし、新基準案は「消費者がどのような情報を求めているか」の観点が置き去りにされ、事業者の実行可能性を重視し、これまでの法律にとらわれたものとなっています。拙速な基準案ではなく、もっと多くの消費者団体と丁寧な議論をして策定して下さい。

【業務用加工食品と一般用加工食品表示区分】
業務用と一般消費者向けとに区分し、食品表示の情報を分断すべきではありません。消費者には、外食、中食を含め加工食品の主な原料の原産地、食品の製造の成り立ちがわかるように全ての製造者の情報と製造年月日を表示すべきです。また輸入品も実際の製造年月日を表示すべきです。これまでの表示基準では、たとえば海外で串に刺して炙った焼き鳥を冷凍で輸入し、国内の食品メーカーで解凍し、調理・加熱した場合、実質的な変更が国内で行われたとして、製造者は国内の食品メーカーとなります。さらにこの焼き鳥を大量に仕入れ、スーパーマーケットで小分けした場合は、スーパーマーケットが加工者と表示され、消費者には半製品に加工した原料の産地も、海外の食品会社の情報も示されず、伝わりません。また、惣菜など中食の対面販売や、外食では「販売員に尋ねればわかる」という前提で、原料原産地表示が除外されていますが、購入するたびに消費者が確認しなければならないのは非現実的で、新基準では改善を求めます。先日、米国の大手食肉企業傘下にある中国の食肉加工会社(上海福喜食品)が、消費期限切れの鶏肉を使ったチキンナゲットを日本の外食産業(日本マクドナルド)と中食販売(ファミリーマート)に納入していた事実が明らかになりました。同社と日本マクドナルドは2002年から取引を行っており、中国の管理当局は上海福喜食品が長期にわたって組織的に、消費期限切れの鶏肉を使用していたことを認定、厚生労働省は、この1年間に同社から約 6,000 トンの食肉加工品が輸入されていたと発表しました。しかし、消費者には同製品が中国で製造されたと確認する表示も、説明もなく、一切知らされていませんでした。今回の事件は、中国の放送局が暴いたほんの一例に過ぎず、何度も繰り返される食品不正の氷山の一角です。「食の安全よりもうけ重視」の企業の責任は厳しく問われるべきですが、同時に、外国産の原料を使用し、加工食品の製造を海外企業に大きく依存しながら、消費者にその事実を表示することなく販売する制度を即刻改めるべきです。外食、中食を含め、主な原料原産地および製造の成り立ちがわかる表示とすること、また消費期限や賞味期限だけではなく、製造年月日を表示することを求めます。その実現のためにトレサビリティ制度を確立してください。さらに食用油脂については日常的に多用する食品であり、例外扱いせず、原材料の一次農産品名とその原産地を表示することを求めます。

【製造所固有記号】
新表示基準案では製造所の所在地及び製造者の氏名等の表示を原則とし、製造所固有記号の使用は認めるべきではありません。これまで食品衛生法に基づく表示基準は、原則として製造所の所在地及び製造者の氏名(法人の名称)の表示を義務づけ、製造所固有記号制度は例外規定としていました。しかし、実際には例外規定の製造所固有記号が主流を占め、消費者は実際にどの企業が、どの工場で製造したかを確認できないまま購入しています。新食品基準案では、「問い合わせ」や「ホームページ等での情報提供」をもって例外規定の製造所固有記号を温存させようとしていますが、消費者に負担させたり、消費者が等しく実行できないことを条件にすることは認められません。また、市民団体の調査で、製造所固有記号が産地偽装や事業者に都合の良い価格設定の隠れみのに悪用される可能性が高いことがわかりました。アグリフーズ群馬工場での農薬混入事件においても製造所固有記号が用いられ、回収が遅れました。製造所由来の事故が発生しその商品が流通した場合、消費者自らその商品を特定できることが重要です。

【加工食品と生鮮食品】
新表示基準案では、これまでの食品衛生法、JAS法、健康増進法の法律を束ねるだけではなく、だれが見てもすっきりとわかり易く、表示拡充をして、「消費者の知る権利」を保障すべきです。たとえば加工品ならば原料原産地を表示しない、生鮮品と区分すれば人の手が加わっている「カットフルーツ」の消費期限や保存方法、カットした加工者も表示をなくすなど後退していて、納得できません。表示は最終的には消費者のためのものです。消費者の「知りたい」に応え、歓迎される新表示基準を求めます。

【アレルギー表示】
表示義務とすべき特定原材料をこれまでの「府令7品目」に「通知20品目」を加え、健康や命にかかわるアレルゲン表示の拡充をすること、消費者自身が原材料にどんなアレルゲンが含まれているかを知り、選択できるようにすべきです。複数の原材料に同じアレルゲンが入っていた場合も、「原材料の一部に〇○を含む」の一括表示ではなく、原材料の直後に( )書きでアレルゲンを表示する「個別表示」とし、たんぱく加水分解物や、発酵調味料、香辛料抽出物など添加物や調味料にもそれぞれアレルゲンの表示をするべきです。同一製造ラインでアレルゲンを含む他製品を扱う場合もその旨明記し、また店頭で計り売りされる総菜や容器包装の面積が小さく表示できないものについては、別途表示することを求めます。

【栄養成分表示】―トランス脂肪酸、飽和脂肪酸
脂質総量のみを表示すべき栄養成分とするのは問題です。「脂質」の表示に加え、動脈硬化性疾患発症のリスクとなるコレステロール、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の栄養表示を直ちに行うことを求めます。日本動脈硬化学会は他の6学会とともに、昨年「要望書」を提出し、「脂質」の表示に加え、コレステロール、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の栄養表示を直ちに行うよう要請し、とりわけ「工業製品としてのトランス脂肪酸はタバコと同様に〝0〟にすることが目的」としている点は重大です。米国、カナダ、韓国、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ブラジル、香港、台湾などへ食品を輸出している日本の食品会社は、その規模のいかんにかかわらず少なくとも「脂質」「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」の表示を実行しています。国民のいのちと健康を守るため、消費者庁がイニシアチブをとり表示を義務化することを要望します。