2011年9月8日 国際活動

ドイツ 核兵器と原発ゼロのたたかいはつながっている

ドイツ平和協会 ウラン・核兵器・原発問題担当国際コーディネーター

マリオン・キュプカーさん

「日本の女性たちの思いがわかって、来てよかった」とキュプカーさん

「日本の女性たちの思いがわかって、来てよかった」とキュプカーさん

 
「核兵器も原発もいらない」、東日本大震災、東京電力・福島原発事故後初の今年の原水爆禁止世界大会は、核兵器のない平和な世界実現への決意を、さらにつよくするものでした。グアム平和正義連合会長のリサリンダ・ナティビダドさんとともに、今年、女性平和基金で招待された、ドイツ平和協会のマリオン・キュプカーさんは、原発ゼロを政府に決断させた女性たちの行動について紹介しました。

一人の女性の行動から、核兵器のないドイツへ

いま私たちは、ドイツ軍基地への米軍の核兵器配備に反対してたたかっています。配備されれば、NATO(北大西洋条約機構)の緊急指令によりドイツ軍パイロットが核爆弾を搭載して目的地へ飛ぶことになります。
ドイツには、数カ所の米軍基地に6万人の米兵が配置され、中東に出撃し、多くの武器・弾薬も貯蔵されています。
ここ数年、「2010年までに核兵器のないドイツを」をスローガンに48の団体が核爆弾撤去のキャンペーンにとりくみ、政府に、国内に配備されたアメリカの核兵器の存在を認めさせました。その大きな力になったのは、基地のそばに住む1人の女性が、行政訴訟に立ち上がったことです。09年、NATO同盟国との交渉により、核兵器を撤去する連立協定を結ばせ、昨年4月には、ドイツ連邦議会が核爆弾撤去賛成を表明、全会一致の決議が採択されました。

再処理施設反対から

2011年6月の政府決議により、最も古い原子炉の半分が廃炉になりました。福島原発事故を受けて、メルケル政権は20年までに原発全廃を決めました。昨秋に自らが決めた、原発稼動延長方針を撤回して…。
背景には市民のたたかいがありました。毎週700の市町村で行われてきた反原発集会「月曜の祈りの夕べ」には、福島原発事故後、全国で14万人が参加、20都市で25万人がデモをしました。
原子力発電は国の助成を受け、「もっとも安価なエネルギー」と宣伝されてきました。見過ごしてはいけないのは、原発が核兵器と深いかかわりがあることです。
核爆弾に使われるプルトニウムは、原発から出る使用済み核燃料を「再処理施設」で加工して抽出されます。旧西ドイツではすでに1980年代に、何十万人もの人が再処理施設建設に反対しました。2つの世界大戦の戦争責任の記憶は、市民にとってあまりに生なましかったのです。
この結果ドイツはフランスとイギリスの再処理施設を使わざるをえなくなり、再処理と同時に生まれる高放射性廃棄物はドイツが回収しています。この物質の貯蔵庫建設地になったゴアレーベン近郊住民の1年がかりの巨大抗議デモは、政府に原子力からの段階的撤退を公約させました。

原発スキャンダル次つぎ

私が原発反対の行動に参加したのは、1980年、16歳のときです。22歳のときにチェルノブイリの事故が起きました。1000㎞も離れているのにドイツの土壌が汚染され放射能警報がだされ、子どもを外で遊ばせてはいけない、食べ物に注意しろなどと言われました。ドイツのある企業が汚染された粉ミルクを発展途上国に輸出する事件も起こりました。
07年12月には政府の委託研究により、事故が起こらなくても、原発が稼動していれば周囲50㎞圏内、5歳以下の子どもの発がん頻度が高いことがあきらかになりました。09年には、中レベル放射能廃棄物の「最終貯蔵所」となっているアッセで放射性物質による地下水汚染が発覚、プルトニウムの違法貯蔵が明らかになり、税金でその廃棄物を回収するというので、ろうそくを手にアッセを起点に52㎞の「人間の鎖」が核廃棄物処理問題の「暗闇」を照らし出そうとしました。
2000年に当時の連立政権が「原子力依存からの撤退」という協定を結び3分の2まで達成されていたにもかかわらず、昨年、現政権が協定を反故にし、原子炉の稼動期間を平均12年も延長したことで、ベルリンの首相官邸前に10万人が集まり抗議、福島原発事故前に、これだけのたたかいがあったのです。
こうしたとりくみのなかでつくられた「再生可能エネルギー法」は、再生可能な方法で生産された電力を固定価格で送電会社に買い取らせ、送電を義務づけ、電力会社の独占を初めてうち破ることになりました。

原発ゼロを決断させた女性たち

女性と子どもが大多数

日本語で“原子力? おことわり”のTシャツもつくりました

日本語で“原子力? おことわり”のTシャツもつくりました

私たちが主催する集会やデモの参加者の大多数が女性と子どもです。私たちは若者向け泊り込み学習会をいろいろなテーマで実施、ワークショップで必ずジェンダーの問題をとりあげています。

カレンダーやキャンディー、缶バッジで市民にアピール

カレンダーやキャンディー、缶バッジで市民にアピール

市民にアピールするために、行動の写真をカレンダーにして普及したり、「原子力?おことわり」と包装紙に書いたキャンデーを配ったり。ツイッターなどさまざまな方法でよびかけます。
原発周辺に住む子どもたちに白血病が多く、その事実を訴え補償をめざす母親たちは、原発の放射能漏れにより白血病が発生する危険があることを発信しています。

高校生の呼びかけにこたえて、核兵器廃絶の署名にサイン―広島でリサリンダさん(手前)と

高校生の呼びかけにこたえて、核兵器廃絶の署名にサイン―広島でリサリンダさん(手前)と

この10年、多くの市民が再生可能エネルギーに投資し、2010年には原発8つ分の余剰電力を生み出しています。余剰電力は近隣諸国に輸出され、送電線の容量を超えたため、風力発電がしばしば止められたほどです。
「原発閉鎖は職場を奪う」とよく言われますが、廃炉には数十年もかかるので、すぐに職場はなくなりません。再生可能エネルギー生産の分野に、09年には原発職員の7倍以上、約34万人が働いています。いま、100以上の地方自治体が、地域内暖房と低圧電線による自給自足のエネルギー供給の途上にあります。

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