2025年9月15日 声明・談話・要請など

【パブコメ】第6次男女共同参画基本計画策定にあたっての基本的考え方(素案)についての意見

6次男女共同参画基本計画策定にあたっての基本的考え方(素案)についての意見

                           2025915日 新日本婦人の会

 

  • 基本的な方針について

 戦後・被爆80年、第4回世界女性会議から30年、日本が女性差別撤廃条約を批准して40年という節目の今年、第6次男女参画基本計画(以後、第6次計画)には大きな期待と関心が寄せられている。女性たちは、「ジェンダー平等・開発・平和」を掲げ、おかしいことに声を上げ連帯して行動し、刑法改正や選択的夫婦別姓制度の法案審議などを実現してきた。第6次計画に女性の実態と声、運動を反映するよう強く求める。「男女共同参画」という文言は「ジェンダー平等」とすべきである。

 

  • 男女共同参画基本計画の目指すべき社会

◇第6次計画は、日本国憲法と女性差別撤廃条約と女性差別撤廃委員会の勧告とともに、国際規範や国際合意にもとづいて策定し、それらの全面実施を通じてジェンダー平等社会をめざすと明記すること。

 

  • 社会情勢の現状、予想される環境変化

◇ジェンダーギャップ指数で118位と低迷を続け、2003年に掲げた2030年までに女性の意思決定参加を30%に引き上げるという目標が、いまだに達成できていない。その原因を分析し、2030年代前半には50%をめざし、クオータ制など具体策とともに明記すること。

◇遅れの原因は、固定的性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアスなど個人の意識の問題にとどまらない。新自由主義の経済政策が非正規雇用や格差・貧困を拡大し、女性の自立を困難にしている。こうした政策や根強い家父長制にもとづく制度や法律を見直してこなかった政治の責任を明確にすること。

◇情勢認識として、気候変動が加速、増大する軍事費が暮らしや社会保障を圧迫し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成をも危うくしている現状を明記すること。

 

3 第6次計画における基本的な視点と取り組むべき事項等

◇ジェンダー平等の前提である差別根絶への姿勢が見えない。あらゆる差別を定義し禁止する包括的差別禁止法、包括的ハラスメント禁止法や性暴力被害者救済法などの法整備を明記すること。 

 

2部 政策篇

I 男女共同参画の推進による多様な幸せ(well-being)の実現

タイトルに「多様な幸せ(well-being)の実現」とあるが、多様な幸せは個人の価値観によって異なる。どのような生き方を選択しても人間らしく生き、暮らせる「ジェンダー平等社会の実現」とすべきである。

 

1分野 ライフステージに応じて全ての人が希望する働き方を選択できる社会の実現

1分野の「希望する働き方を選択できる社会の実現」と第3分野の「女性の所得向上と経済的自立の実現」をあわせて、「雇用等におけるジェンダー平等の実現」として論じられるべきである。

3分野の「基本認識」で「非正規雇用は、多様なニーズに応えるという積極的意義もある」と記述しているが、出産や家族のケアのために仕事を辞めたり、不本意ながら非正規で働く女性の比率は高く、その結果、女性の貧困化がすすんでいる。「希望する働き方を選択できる」ことが目的なのではなく、長時間労働の是正、まともに暮らせる賃金、仕事とケアや家庭生活を両立できる社会基盤・環境整備こそ急がれる。

 

◇法定労働時間を17時間、週35時間とし、労働基準法の労働時間規制強化を明記すること。

◇非正規ではなく正規雇用をあたりまえとし、同一価値労働同一賃金、全国一律の最低賃金1500円以上と、そのための中小企業への支援を明記すること。

◇男女賃金格差の是正へ、企業の公表義務を正規、非正規の男女比を含めるなどさらに強化し、罰則も含めた法改正を明記すること。

◇「多様な正社員」「テレワーク支援」「リモートワークでの副業・兼業」などは非正規化や低い処遇につながり、推奨すべきではない。労働者派遣法を抜本的に改正し、派遣労働は一時的・専門的業務に限定すること。

◇保育や介護、医療など、女性が多いケア労働の処遇改善と賃金の大幅引き上げを明記すること。

◇小学校卒業までの育児時短、看護休暇や介護休業などの拡充をはじめとする育児介護休業制度の改善を明記すること。

◇所得税法第56条を廃止し、自営業の家族従事者の労賃を正当に評価すること。

◇「コース別雇用管理」などの間接差別禁止を明記すること。

◇仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関するILO190号条約を批准し、包括的ハラスメント禁止法を制定すること。

 

2分野 あらゆる分野における政策・方針決定過程への女性の参画拡大

1 政治分野

◇政治分野における男女共同参画推進法にもとづき、政党が選挙で男女同数の候補者擁立に責任を持つこと。同法を目標設定義務や罰則規定の明記など、より実効性あるものにすること。

◇小選挙区制を廃止し、パリテ(男女同数)やクオータ制の導入も含め、比例代表を中心とした選挙制度へと抜本的に改革すること。

◇地方議会、特に都道府県議会での女性議員の割合引き上げへ、選挙区定数12という準小選挙区制の見直すこと。

◇女性の政治進出を阻み、政党や政治家の劣化をもたらしている、小選挙区制度、企業団体献金、政党助成金を廃止すること。

◇女性差別撤廃委員会の勧告でフォローアップ項目に指定された「暫定的特別措置として、女性が立候補する際の供託金の減額」を実行すること。

◇女性議員に対する議会内やSNS上などでのハラスメントを防止するために、早急に手立てをとること。

 

3分野 女性の所得向上と経済的自立の実現

1分野の「希望する働き方を選択できる社会の実現」と第3分野の「女性の所得向上と経済的自立の実現」をあわせて、「雇用等におけるジェンダー平等の実現」として論じられるべきである。

3分野の「基本認識」で「非正規雇用は、多様なニーズに応えるという積極的意義もある」と記述しているが、出産や家族のケアのために仕事を辞めたり、不本意ながら非正規で働く女性の比率は高く、その結果、女性の貧困化がすすんでいる。「希望する働き方を選択できる」ことが目的なのではなく、長時間労働の是正、まともに暮らせる賃金、仕事とケアや家庭生活を両立できる社会基盤・環境整備こそ急がれる。

 

4分野 生涯を通じた男女の健康への支援

セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利、SRHR)を保障する立場を貫くこと。学校教育や社会教育を含め、あらゆる年代に「包括的性教育」を位置づけること。

 

1 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援

ア 包括的な健康支援のための体制・環境の整備

◇緊急避妊薬の処方箋なしでの薬局窓口での販売は、女性差別撤廃委員会の勧告にもとづいたもので歓迎するが、高額で購入できないおそれがある。すべての女性が手ごろな価格で入手できるようにすること。

◇人工妊娠中絶について、配偶者同意要件を撤廃すること。

◇女性たちの運動で生理用品の学校や公共施設への無料設置が広がり、非課税や軽減税率を実施している国もある。経済的な理由で生理用品を購入できない「生理の貧困」という問題にとどまらない。自己責任ではなく、人権と尊厳の保障として誰もが必要な時に生理用品を入手できるよう、具体的措置を盛り込むこと。

 

ウ 妊娠・出産・産後ケアに対する支援

◇分娩施設のない自治体が6割にのぼり、「移動中のタクシーのなかで分娩、30万円の損害賠償請求」などの事態も起こっている。どこに住んでいても安心して妊娠・出産ができるよう、特別な財政措置をとって産院や産科、助産院を拡充すること。

 

エ 年代ごとにおける取組の推進

「包括的性教育」は身体や生殖のしくみだけではなく、人間関係や性の多様性、ジェンダー平等、ウェルビーイング(幸福や健康)など幅広いテーマを含むものであり、ユネスコや世界保健機関(WHO)も推奨している。早い段階で性についての正しい知識を得ることは、望まない妊娠、性感染症、性被害の防止になる。また、LGBTQ+の子どもたちや、家庭環境が多様な子どもたちを排除しないなど、多様性の尊重、男女共同参画の推進にもつながる。

 

◇この分野にこそ、包括的性教育を位置づけ、行政や学校、地域で推進すること。

 

5分野  テクノロジーの進展・利活用の広がりを踏まえた男女共同参画の推進

  • テクノロジー関連施策のジェンダー主流化、ジェンダード・イノベーションの推進及び安全・安心な利用環境の整備

デジタルデバイスはもはや、子どもたちも含め人々の生活と切り離せなくなっている。小中学生に11台タブレットが配布され、インターネット上の未成年への性的搾取や暴力的な表現も含むわいせつ広告に日常的にふれている。SNSをとおした性被害の急増や、子ども同士の盗撮被害の問題も深刻である。素案にある利用環境の整備のみでは対応はむずかしく、個人の努力だけでは防ぎきれない。

 

◇インターネット上の広告や、SNSでの不適切な書き込み、動画・画像の投稿に対して法整備を含めた対応を盛り込むこと。

 

6分野 ジェンダーに基づくあらゆる暴力を容認しない社会基盤の形成と被害者支援の充実

◇性暴力のない社会へ、ことばによるものも含め暴力は重大な人権侵害であることを職場、学校、地域などあらゆる場で周知徹底し、被害者の保護や救済など法制化と財源確保を急ぐこと。

◇性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの拡充へ、24時間365日対応、スタッフや相談員の処遇改善、相談先の周知徹底など財源を確保し、推進すること。

◇困難な問題を抱える女性支援法(「女性支援新法」)にもとづく女性相談支援員を増員し、正規雇用など抜本的な処遇改善と研修体制の強化を急ぐこと。

◇子どもを含めDVや監護者などからの性暴力被害者に対して、一時保護のあり方を見直し、身体的にも心理的にも安心して過ごせる場所、学習保障など抜本的に改善すること。

◇離婚後の共同親権は、DVの被害者や子どもをさらに追い詰める可能性が懸念される。実態をつかみ被害者保護など必要な措置をとること。家庭裁判所の増員・体制強化をはかること。

◇性搾取の場となっている風俗店など業者を取り締まり、女性たちの居場所確保やケア、暮らしの援助、自立支援を強化すること。

◇刑法の「不同意性交等罪」について、「性交同意年齢」のさらなる引き上げや、加害者処罰の強化、控訴時効の撤廃などの法改正を明記すること。

◇性搾取禁止の法制化を明記すること。

◇性交を含む撮影を前提としている「アダルトビデオ出演被害防止・救済法」を改正し、性行為などの契約を禁止すること。

 

7分野 男女共同参画の視点に立って貧困等生活上の困難に対する支援と多様性を尊重する環境の整備

 男女賃金格差と女性の非正規化、社会保障の自己負担増などが女性の貧困を深刻にしている。賃金や年金の引き上げ、社会保障の拡充が急がれる。

 

◇生活保護制度は、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するにふさわしく、拡充すること。今の物価高騰に見合う生活保護基準や、母子加算など改善すること。

◇医療、介護、年金などの保険料は応能負担の原則で、低賃金の人の保険料は引き下げること。

◇すべての国民を対象に全額国庫負担による最低保障年金制度を導入すること。減額につながるマクロ経済スライド制はただちに廃止すること。

◇訪問介護事業所への介護報酬を至急増額し、地域の訪問介護体制を支えること。ヘルパーの大幅な処遇改善をすること。

◇必要な人が必要な時に利用できる介護保険制度へ、抜本的に改善すること。利用者の負担増になる制度改悪はやめること。

◇国の責任で子どもの医療費無料化をおこなうこと。75歳以上の窓口2割負担をやめ、後期高齢者医療制度は廃止し、国の制度として無料化を復活させること。

◇難病患者も含め、障害者(児)が必要かつ十分な医療、福祉サービスを無料で受けられるよう財源を確保し、社会基盤の整備を早急に進めること。

◇外国人に人権と人間らしい生活を保障すること。人種差別を煽るヘイトスピーチや行為は許さないとの毅然とした立場を明確にし、強制送還ありきで命を危険にさらす出入国管理法を、難民条約と国際基準に見合ったものに抜本的に改正すること。

 

8分野 防災・復興における男女共同参画の推進

今年も観測史上更新となる気温上昇、豪雨災害が頻発し、多くの人命が失われている。これらの極端気象現象の原因は人為的行為による温室効果ガスの排出であるにもかかわらず、素案は気候変動による気象災害リスク増加への視点が欠落している。温室効果ガス排出が一向に減少に転じていない中、気候変動対策、すなわちエネルギー政策のあり方は、人類を含むあらゆる生物の命を守り、環境破壊を阻止できるかどうかを左右する。気候変動による被害は、高齢者や女性、子どもなど社会的弱者により大きくい。原発ゼロ、化石燃料からの脱却、再生可能エネルギーへの転換、省エネルギーの推進が急がれている。

 

◇タイトルを第5次計画と同じく「防災・復興、環境問題における男女共同参画の推進」とすること。

◇「具体的な取組」においては、とりくみを促進する責任を負う省庁を明記すること。女性参画の目標を設定し、進捗を検証しながら促進すること。

◇防災庁の新設にあたっては、機構をはじめ政策立案、運営にジェンダー主流化を徹底すること。

◇被災者や支援者が、性暴力など暴力の被害者にも加害者にもならないようにするための具体的措置を明記すること。

◇防災・危機管理部局の職員を増員し、少なくとも複数の女性職員を配置すること。

◇「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」の周知徹底や研修は、地方公共団体の長など自治体の全体を指揮・統括する立場の職員も対象とすること。

◇個々人に非常時の物資を備えるよう呼びかける以前に、国として女性や乳幼児、高齢者向けの必需品を含め、被災者に十分な物資を迅速に提供できるよう、体制を整えること。

 

 

II 男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備・強化

9分野 地域における男女共同参画の状況に応じた取組の推進

 素案は若者の出身地域からの流出について、「女性や若者に選ばれる地域づくり」や「女性にも選ばれる地方実現」を打ち出し、背景に根強い固定的性別役割分担意識やアンコンシャス・バイアスがあることを強調している。しかし、進学先や就職先がない、加えて、賃金格差や医療機関の不足、バスや鉄道など交通網の縮小や廃止など住み続けられない現状がある。構造的な問題の解決こそ急務である。

 

◇医療、介護、保育などの社会基盤や公共交通の確保、全国一律最低賃金の導入、農林水産業への財政支援の強化を明記すること。

◇独立行政法人男女共同参画機構が「センターオブセンターズ」として自治体の男女共同参画センターと連携しながら、ジェンダー平等施策を推進する役割を発揮できるよう、十分な予算と人員を配置すること。

◇環境問題は地域だけの課題ではない。第8分野への意見として述べたように、「防災・復興、環境問題」として扱うべきである。原発ゼロ、火力発電からの脱却、再生可能エネルギー政策への転換を急ぎ、政府が掲げる2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロの「カーボンニュートラル」実現へ、年度ごとに目標数値の設定と確実な実行を明記すること。

 

10分野 男女共同参画の視点に立った各種制度等の整備

1 男女共同参画の視点に立った各種制度見直し

選択的夫婦別姓制度の導入を求める世論は、当事者や女性たちの運動が広がり、日本経済団体連合会も政府に提言するなど、第5次計画以降さらに高まった。新日本婦人の会が今年1月におこなった緊急アンケートには3979人が回答し、日本社会に残る家制度の慣習に苦しむ女性たちの声が多数寄せられ、28年ぶりにおこなわれた国会での選択的夫婦別姓制度をめぐる議論でも活用された。

素案は「引き続き旧姓の通称使用の拡大」としているが、国会審議でも、旧姓使用の拡大では本質的な問題を解決できないことは明らかになっている。家族のあり方は多様で、親子で別氏の家族は多数ある。「家族の一体感、こどもへの影響」は、選択的夫婦別姓制度導入に踏み出さない理由にはならない。「名前は人権」であり、同姓、別姓を選べる制度にすることは、個人の尊厳、ジェンダー平等の土台である。法律で同姓を強制している国は、もはや日本だけで、女性差別撤廃委員会も繰り返し勧告し、フォローアップ項目にも指定された。にもかかわらず、素案の記述が5次計画とまったく変わっていないことは、政府としての姿勢が問われる。

 

◇選択的夫婦別姓制度の導入を明記すること。

◇税と社会保障の制度を世帯単位から個人単位へあらためること。第3号年金や配偶者控除の廃止で負担増とならない手立てをとること。応能負担の原則に立ち返り、生活に必要な生計費には課税しないなどの見直しをおこなうこと。

◇子ども・子育て支援制度は全額公費でまかない、社会保険料への上乗せなど新たな負担増はやめること。

◇低所得者ほど負担の重い消費税は廃止をめざし、ただちに5%への減税をおこなうこと。

◇高すぎる国民健康保険料は国庫負担の増額で引き下げ、子ども均等割をなくすこと。

◇子ども関連の予算を増やし、出産や保育、教育費などの負担を軽減すること。

◇高等教育の学費値下げ、無償化を実施すること。給付制奨学金制度を充実させること。

 

11分野 教育・メディアなどを通じた男女双方の意識改革、理解の促進

「意識改革、理解の促進」というタイトルはふさわしくない。その前提として法律や制度の見直し、整備が必要である。

 

1 男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実

校長に占める女性割合は2023年で小学校26.8%、中学校11.0%、高校10.4%と今なお低く、日本の学校は依然として、学年が進むにつれ男性中心となっている。

 

◇管理職の女性割合を高め、女性の声を反映できるよう、教育現場のジェンダー平等を推進すること。

◇大きな社会問題になっている教員の長時間労働の問題を、女性差別撤廃委員会の勧告にもとづいて解決すること。

◇生理の手当のための休み時間、トイレの数、体育の授業や入試のあり方などを見直すこと。

◇固定的役割分担意識やアンコンシャス・バイアスをなくすためにも、科学と人権にもとづいた包括的性教育、ジェンダー平等教育を推進すること。

 

2 国民的広がりを持って地域に浸透する広報活動の展開とメディア分野などと連携した積極的な情報発信 

 新日本婦人の会は202424月、コンビニエンスストアの「成人誌復活」について緊急調査(3241店舗)をおこない、大手3社の本社や地域ストアの本社に要請・懇談した。一部店舗では撤去や縮小が実現しているが、こうしたとりくみを各社の判断にのみ任せるのではなく、政府として性暴力や性搾取、性売買を助長するメディアに対して毅然と対処すべきである。

 

◇国連女性差別撤廃委員会の勧告にもとづき、差別的なジェンダー固定観念を助長し、女性と女児に対する性的暴力を強化するポルノ、ビデオゲーム、アニメーション製品の生産と流通に対処するために、既存の法的措置と監視プログラムを効果的に実施すること。

◇メディアに対し、意思決定での女性の比率を引き上げ、人権とジェンダー視点に立った報道や番組制作、CM放送をおこなうよう求めること。

 

12分野 男女共同参画に関する国際的な協調及び貢献

 第5次計画と同様、「ジェンダー平等・開発・平和」にかかわる分野が「国際的な協調及び貢献」にとどまり、日本の課題になっていないのは問題である。

「基本認識」で「女子差別撤廃委員会対日審査や北京+30を踏まえた国連女性の地位委員会等における意見や議論を踏まえ、女子差別撤廃条約を積極的に遵守」としているが、日本は締約国として条約の実施義務を負っており、勧告を全面的に実施する姿勢を明確にすべきである。

5次計画との大きな違いは、国際的なリーダーシップの発揮の具体的なとりくみとして、「WPSの理念を踏まえた女性の平和等への貢献や紛争下の性的暴力への対応」を打ち出したことである。女性差別撤廃員会の総括所見では、WPS(女性、平和、安全保障)の項で沖縄の米軍駐留への懸念が示され、米兵による性暴力の防止、加害者処罰と被害者保護が勧告された。他国の紛争下の性暴力への対応にとどまらず、国内の問題としてとりくむ課題である。

 

◇第12分野のタイトルは「国際規範の遵守と『ジェンダー平等・開発・平和』の推進」とすること。

◇「基本認識」に、唯一の戦争被爆国であり戦争放棄をうたう憲法を持つ国として、「国連憲章、日本国憲法の平和原則に立ち、紛争や戦争の防止、核兵器禁止条約に参加し廃絶と完全軍縮へ国際社会でイニシアチブをとる」ことを明記すること。

◇増大する軍事費をSDGs達成に振り分けるべきとした国連の報告書を受け、軍事費削減を明記すること。

◇女性差別撤廃条約と女性差別撤廃委員会の勧告の周知度を高め、勧告の実施に向けたとりくみを政府だけでなく国会にも要請すること。勧告され続けている女性差別撤廃条約選択議定書は「早期に批准する」こと。

◇勧告を真摯に受け止め、沖縄の米兵による性暴力を根絶し、日本軍「慰安婦」問題についても事実認定、公式の謝罪と賠償、教科書への記述を含め再発防止など被害女性が受け入れられる解決を急ぎ、尊厳と人権を回復すること。

 

 

III 男女共同参画社会の実現に向けた推進体制の整備・強化

◇素案は「男女共同参画会議」を国内本部機構として位置づけ、推進体制に「男女共同参画推進本部」「すべての女性が輝く社会づくり本部」「男女共同参画推進連携会議」、さらに男女共同参画機構の新設を列挙しているが、男女共同参画を担当する大臣は兼任のままである。女性差別撤廃委員会の勧告にしたがい、女性問題とジェンダー平等に関する専任の省と、都道府県および地方レベルでそれに対応する部局の設立、そうした省への十分な人員や予算の配分を明記すること。

NGOをはじめ「多様な主体」との連携をすすめるうえで、意見募集の期間を十分にとるなど市民社会の声を「聞く」機会を保障すること。現場で活動する女性・市民団体からの意見や情報を広くとりいれる体制を明記すること。

 

 

 

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第6次男女共同参画基本計画策定にあたっての基本的考え方(素案)についての意見

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