2007年5月31日 ジェンダー平等

第8回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議              高田公子会長のレポート                            何としても九条を守って!ハルモニの心はわが思い

新婦人しんぶん 2007年5月31日号

強制性を裏づける証拠はなかった」と日本軍「慰安婦」について国会で答弁した安倍首相が、一方で改憲手続き法を強行。「戦争する国へ」危険な動きを示すなか、5月19日~21日第8回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議がソウルで開かれました。10カ国から200人、日本は25団体48人が参加し、新婦人から高田公子会長が出席。憲法9条改悪を試み戦争国家への回帰をすすめる日本政府への批判の声が相次ぎました。
□言葉も人間性も奪われ□
「私たちはロープで縛られ拉致されて、抵抗すると叩かれ、鼻には刺された傷跡がいまでも残っています」と証言したフィリピンからきた日本軍「慰安婦」被害者のピラール・ピリアスさん。20歳のとき、日本軍に軍用トラックで連行され、中国・杭州の物資や水も不足した戦場で30人くらいの兵士の相手をさせられ、応じないと軍刀で脅かされたと語る台湾からきたファン・シューメイさん。会議で語られた被害者の証言はどれもつらく生々しく、軍の関与をあくまでも認めない安倍首相の発言を真っ向から否定するものでした。
私が会議の合間に話すことができた韓国の李容洙(イヨンス)も、「安倍は『証拠はない』というけれど、私が生き証人。私を日本の議会に呼んでほしい。ブッシュに謝ったというけど、彼らはいま世界の平和を崩している2人じゃないですか。謝るなら私に手をついてほしい。安倍が謝らない限り、私の青春はない」と語っていました。
「名前も言葉も奪われ、処女も供出させられ、人間としての尊厳のあらゆるものを奪いつくされた。こうしてあなたとおしゃべりできるのは、あのとき覚えた日本語です」と。何度も迷い、1992年、63歳のときに勇気をふりしぼって名乗り出ました。証言台に立って自分の生なましい体験を口にするたび過去を思い出し、その日は眠れない。けれど自分が証言したときに「あなたの証言こそ真実だ。安倍がウソを言い繕っていることがはっきりわかった」と言われて勇気づけられた。ぜひ日本の若者に真実を知ってもらいたいと語ります。
さらに李さんは、「韓国が日本と違うのは、戦争の被害者としての苦悩が国民のなかに深くあるから。加害責任を伝えない日本の学校教育にすごく問題を感じる。いまあらためて日本が過去の歴史と向き合って9条を守り抜いてほしい。9条は、私たち韓国と日本、アジアの共同の財産だから」と。日本が再び戦争をする国になったらと思うと黙っておれない、自分ができるすべてのことをし尽くしたいと抱擁されたときには、李さんの熱い思いが私の体を包みました。
じつは私は、韓国語はもちろん英語もわからず1人でハラハラしていました。日本軍「慰安婦」ハルモニ(おばあさん)たちに直接会ってわかったのは、多くの方が日本語を話せるということでした。しかし、それが言語を奪われ日本語を強制されたからだとわかったとき、胸がしめつけられました。
♪さいた、さいた、チューリップの花が…と文化交流のときにハルモニたちが歌っている姿を見ていて、涙がこぼれました。
アジア連帯会議は今回8回目。新婦人は第1回目と日本で開かれたときには、代表を送ってきました。今回の会議の韓国挺身隊問題対策協議会の代表による主催者報告(テーマ発表)では、この15年間にどんな困難を乗り越えどういう到達をかちとってきたかがていねいに報告されました。
1991年に金学順(キムハクスン)という1人の勇気あるハルモニの「私は日本軍の『慰安婦』にされた」との証言で、戦後52年ぶりにその事実が初めて語られ、それが周りの被害者たちを励まし、次つぎと証言者が…。それから15年、正義と真実が歴史を突き破って前に進めてきたのだとつくづく思いました。
□危険な動きはあせりも□
「女たちの戦争と平和資料館」館長の西野瑠美子さんが、日本国内の動きと展望について特別発表。教育基本法改悪、歴史教科書から「慰安婦」の記述が消された教科書問題、改憲手続き法まで、いかに日本が危険なところにきているかという話を聞いた参加者は、休憩時に私たちに、「本当に危ないのか」「食い止める道はないのか」などの質問を寄せてきました。
2日目、午前中の自由討論では、私も積極的に手を上げて発言しました。安倍首相の侵略戦争の真実を消し去ろうとする右翼的な発言に対し、「新婦人は直ちに街頭での宣伝行動含め一つ一つ反撃している。今回のような動きが強まっているのは、同時に彼らの行き詰まりであり、あせりでもある。3年前、日本の良識を代表し『九条の会』が発足していま6千をこえて広がっている」と持っていった「9条グッズ」を見せながら、全国の会員のがんばりをリアルに報告。この会議に参加して、2千万人のアジアの人たちの命と、10万とも20万とも言われるハルモニたちの、人間の尊厳を奪われた言語に絶する苦しみ、悲しみを共有でき、それを乗り越えてこられた姿に、正義と真実こそ歴史をつき動かすとあらためて確信を持つことができました。
私はその思いと、ハルモニと彼女たちを支えてこられたみなさんの思いを心に刻み、日本政府に謝罪させ補償の実現を勝ちとることが過去の侵略戦争と向き合うことになり、戦争を放棄した日本国憲法を守る大きな力につながる、新婦人はみなさんと力をあわせてがんばります、と発言を結びました。
発言が終わると「9条グッズがほしい」と話しかけられ、200個の9条バッジや憲法バンダナがあっという間になくなり、つけていた9条イヤリングやブローチまで差し上げることに。韓国の地方の女性団体の代表から「9条を守るために何でもしたい。韓国で広げたいから9条バッジを送って」と言われて、感激しました。
□世界中から批判の声□
運動は、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、フィリピンと世界各地にひろがってきています。
その象徴が今回の米議会の「121号決議」です。下院にマイク・ホンダ議員が提出した日本軍「慰安婦」問題に関する決議案に賛同する議員は、5月11日現在125人に。なぜ自分たちがいまこの問題にとりくんでいるのか―アメリカから参加した大学教授の李鐘和(リジョンファ)さんは、「自国の侵略戦争のなかで戦争犯罪が免罪されているアメリカで日本軍『慰安婦』について知らせることは、自国の行為そのものが許されないことを市民に浸透させていくことになる。この決議はアメリカを道徳、正義が通る社会にするもの。戦争のない平和な社会をつくっていきたい」と。米国内で、日本軍「慰安婦」の生の声を共有しながら個人・団体が韓国メディアや良心的な宗教者と一緒に、署名を持って地元の議員1人1人と対話を重ねてきた。草の根の行動が今の状況をつくりだしてきたと、報告されました。
カナダ議会でも同様の決議案が小委員会を通過し、オーストラリアでも準備中と。安倍首相がすすめる「戦争する国づくり」に、世界中が声を発し、たたかいの輪をひろげてきていることを実感しました。
韓国では最近、毎週の日本大使館前の座り込みに、若い人が参加するようになったとハルモニはうれしそうに語っていました。この集会の主催者である韓国の「挺対協」を支えるのも圧倒的に若者たち。一番若い被害者は当時13歳、62年たって75歳になり、みなさん高齢ですが、その心は若い人たちに確かに引き継がれていると思いました。
フィリピンでも、日本政府が法的責任を回避するために設置した「女性のためのアジア平和国民基金」を受けとった人と受けとらない人など3つに分断された組織が、いま再び「安倍は本当には謝っていない、謝るまでたたかうべきだ」と気持ちを一つにたたかえるようになったと、語っていました。
「勇気を持って発言したハルモニたちの思いが生きる世界、アジアをつくろう」とスタートしたこの会議が、今、日本国憲法を守り、戦争のない平和な世界をつくるための大きな一歩になったと確信します。集会で採択された決議は、憲法9条改悪を試み戦争国家への回帰をすすめる日本政府を批判し、この15年のアジア連帯会議の精神と活動の成果を国際連帯会議へと拡大発展させることを提起。この8月8日を「国際連帯の日」とするなど、多彩なキャンペーンの展開を呼びかけました。

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