2020年10月23日 アクション

10・13新婦人「秋の行動」中央総行動・省庁交渉 

厚労省に要請書を手渡す米山淳子新婦人会長(左から3人目)

 

国の来年度予算案編成に向け、2020年新婦人「秋の行動」中央総行動の省庁交渉(文部科学省、防衛省、厚生労働省、国土交通省・内閣府)が10月13日、衆議院第2議員会館内でおこなわれました。今年は新型コロナウイルスの感染拡大による制約で、参加は首都圏4都県(東京、埼玉、千葉、神奈川)とオンラインで沖縄と熊本の会員ら35人。コロナ禍で浮かび上がった学校教育や保育、地域医療などの課題、基地強化と軍事化、相次ぐ豪雨や台風被害など、現場のリアルな実態で各省庁に迫りました。

 

◎厚労省

【要請項目】

・エッセンシャルワーカーへふさわしい賃金と労働条件の保障を

・公立・公的病院の再編統合リストの撤回と地域医療の拡充を

・保育・学童保育の職員配置の改善と認可保育所の増設を

・インフルエンザとの同時流行を防ぎ、PCR検査の拡充を

 

子ども、医療、エッセンシャルワーカー守れ!

 子どもたちとの濃厚接触が避けられない保育や学童保育のエッセンシャルワークの現場は緊張の連続。交渉には、保育に携わる会員も複数参加しました。
 「消毒など感染予防の業務が増えて神経をすり減らしている。ふたたび感染症の流行や、大災害が起きた時に現在の職員数では子どもの命を守れない。戦後直後から変わらない職員配置基準を一日も早く見直しを」(東京・練馬支部)、「人手不足の中、手取りが20万円にも満たない賃金では求人しても応募がない」(神奈川・座間支部)、「0~2歳までの小規模保育所が増えて、3歳以降の待機児童が増えている。0歳から就学まで安心して通える認可保育所こそ必要」(千葉・松戸支部)と現場の切実な声を届けました。
 地域医療で大きな役割を担う病院が再編統合のリストに掲載され、計画の撤回を求める運動を地域で広げる埼玉・大宮支部。「埼玉県は全国一、医師も病床も少ない。今回の計画にはさいたま市も県も反対。計画自体が国民の命を守るものではない」と計画の撤回を求めました。
 一方、厚労省の担当者は、「リストは国が持つ最新のデータで作成したもの。あくまで検討の材料として地域で議論してほしい」とリストの撤回はせず責任を丸投げする態度で、参加者からは怒りの声が。神奈川県本部は、新型コロナ患者を受け入れる病院の経営が悪化しており、「地域医療の崩壊を危惧している。医療機関への緊急の財政支援は待ったなし。再編統合はやめて地域医療に予算を」と迫りました。

 

◎防衛省

【要請項目】

・沖縄・帆の子新基地建設中止・計画撤回を

・オスプレイの全国配備撤回を

・軍事費の大幅削減を

 

軍事で命は守れない!

 沖縄から初めてオンラインで参加した久手堅幸子県本部会長は、「県民は何度も辺野古基地建設反対の民意を示してきた。国の設計変更に対する意見書提出も僅か20日間で2013年の6倍を超える1万8904件も出された。南部から埋め立てに使う土砂を運ぶ計画だが、今でも戦没者の遺骨や遺品が見つかる。県民の血が染み込んだ土を一握りも、基地のために使わせたくない。軟弱地盤で基地建設は不可能。1日も早く基地建設の中止を」と訴えました。
 続いて、「オスプレイの木更津基地への配備に反対。木更津基地がいっそう戦争に足を踏み入れていくのではないか。訓練の情報提供や騒音、低周波の調査と対応をしてほしい」(千葉・木更津支部)、「小学校や住宅密集地の上空を戦闘機などが朝7時から深夜12時過ぎまで飛ぶ。爆音がひどく、子どもたちは睡眠不足。頭痛やイライラを感じ、危険に怯えながら生活している。厚木基地にオスプレイの整備拠点をつくる計画に住民は不安になっている。危険なオスプレイは配備しないで」(神奈川県本部)、「入間基地から1㎞の所に住み、航空機のエンジンテスト音がずっと響く。武器を何百億円も購入するのではなく、まず国民の生活に税金を使ってほしい」(埼玉・狭山支部)など切実な思いを発言。
 しかし、防衛省は要請内容にも、質問にもまったく答えず、政府の「見解」を繰り返すばかり。国民の声を一切聞かない菅政権の姿勢そのものの防衛省官僚の対応に、改めて怒りがこみ上げました。

 

◎国土交通省・内閣府

【要請項目】

・被災実態に合った判定と生活再建へ支援制度拡充を

・「ダムありき」でなく、河川整備は河道の強化・拡大を基本に住民参加を

・被災者再建支援金を500万円に。風害認定の基準拡充を

・避難情報弱者をなくすシステム導入、新型コロナ対応の避難所、福祉避難所拡充を

・内水氾濫防止へ強力なポンプ、監視カメラの増設を

・河川の危険個所、重要水防箇所の地域住民への周知、早急に危険個所対策を

 

被災の実態次つぎ 訴えが胸に

 オンラインで熊本から参加した人吉市の東由海(ひがしゆみ)さんは、球磨川の氾濫で自宅は約2メートル浸水。「汚泥にまみれ家財はすべて廃棄。しかし鉄筋コンクリート製のアパートのため半壊ながら支援金はゼロ。大きな穴に2度突き落とされたような気持ち」と、支援を強く訴えました。また、かつて住民の反対で中止となったダム建設計画が「どさくさに紛れて再浮上している」と告発。住民の声を聞き、ダムに頼らない治水対策を求めました。
 大雨で増水した本川に支流の水が流れ出ず、逆流して起こる「内水氾濫」。埼玉・川越支部の会員は、「2年と経たない内に2度も浸水し、台風のたびに不安」と、水を貯める用地確保や大型ポンプ設置に国の財政支援を要請。
 昨年の台風19号で多摩川の氾濫で被災した神奈川・中原支部の会員は「家が浸水し、仕事に欠かせないものも無くし、多くの人が途方にくれている」と。低い堤防や、川幅が狭くなっている箇所に住民不安が募っており、検討中の整備計画見直しに、地域住民や自治体の声を反映させるよう求めました。東京都本部からは、情報弱者を無くすために家庭へのラジオ配布やテレビのデータ放送などの活用、避難所のたらい回しをなくすシステム導入に国の支援を要請。
 千葉県鋸南町の会員は、「昨年の台風15号で屋根が破損したまま、修繕できず、今もブルーシートがかかった家が多い。雨漏りで家が傷み、カビが発生、健康被害も。高齢者も多く、自力再建は難しい」と説明。「自助、共助は十分にやっている。今こそ公助を」と、財政難で災害公営住宅建設が進まない町への支援を要望しました。
 国交省の担当者は、川の水位を下げる治水対策などを紹介。災害公営住宅は建設費の3分の2を国が補助、激甚災害指定された鋸南町は4分の3の補助があるとし、「自治体の要望があれば、すぐ対応する」と応じました。内閣府は、被災者生活再建支援金に関して、半壊のうち損害割合30%台は支援金の対象とし、建設・購入で100万円、補修で50万円、賃貸で25万円が妥当と議論していると。ただ、支援金500万円への引き上げには、「制度は全都道府県の『相互扶助』の観点で拠出した基金、国が半分負担している制度」と、国の財政負担引き上げが急務との認識がないことにびっくり。国による抜本対策の緊急性が浮かび上がりました。

 

◎文科省

【要請項目】

・教室の「密」を避け、どの子にもゆきとどいた教育を保障するため、国の責任で少人数学級をただちに実施すること。そのために正規の教員を増やすこと。

・大学など(国公立・私立・専門、課程、学年、国籍を問わず)の学費を一律半額にすること。公立私立とも高校授業料を無償化すること。

・全国一斉学力テストは来年度以降も中止すること。

 

 少人数学級、大学学費一律半額、全国学力テストの中止の3項目で要請。文科省の担当者から「喫緊の課題なのでスピード感をもって、年内に一定の方向を出して、来年度予算にも反映していく」と、前向きな答弁も。「ぜひ実現を!そのためには、何ができる?」も含めて懇談する45分間となりました。

 

分散登校で少人数学級を経験

 埼玉の二宮さん(浦和支部)は、「6月の分散登校では、先生は一人ひとりに目が行き届き、算数でつまづいている子の横で教えられたそうです。子どもの安全や健康、先生たちのストレスの削減を早く実現してほしい」。
 神奈川の梅村さん(神奈川支部)は、2学期に入り、先生にも余裕がなくなり学級運営が困難になっている状況を紹介。「(学校再開直後の)わずか二週間の20人以下学級の経験でしたが、子どもが落ち着き、意欲的に課題に取り組んでいた姿が忘れられません。今後は少人数学級でなければならない、と強く思う。先生の笑顔なしに子どもの笑顔もない。先生を増やして負担を軽減してほしい」。
 田野井さん(鎌倉支部)は、「給食は前を向いて静かに食べねばならず、学校行事も大幅に縮小。5年生の宿泊行事はなくなり、運動会もプログラムを縮小です。子どもたちはがまんの連続で大きなストレスを抱えて学校生活を送っている。分散登校で経験した少人数学級を『新たな日常』にしてほしい」。
 埼玉の高田さん(県本部会長)が「長年、少人数学級を求めて運動してきた。財務省を動かし予算を勝ちとってほしい。先生は非正規ではなく正規で」と激励しつつ迫ると、担当者からは「(学級編成を)30年間変えてこなかったので、正直な話これを変えるのは大変。計画的にやっていきたい。先生たちからも40人をフルでみるのは難しいとの声をいただいている。少しでも負担を軽減できる体制づくりが必要と実感している」と答えました。
 つづいて参加者が「実現へむけ、さらなる応援をしたいが、何をすれば?」と問うと、「一つは声を出し続けていただくことです。こんなタイミングはなかなかないと思う。やれることはやっていきたい」と担当者がコメントしました。

授業なく、教育ローン抱え、バイトもない…

 学費半額を求める要望では、コロナ禍で孤立する学生の事態が出されました。
 「大学1年生の娘は、4月にコロナ禍で雇止めにあい、その後アルバイトに応募したが5つ落ちた。対面授業がない中で奨学金という教育ローンを抱え、収入もない状況を想像してほしい」と、神奈川県本部の利光さん。「社会に出る前に、何度も『格差がある』というメッセージを受け続けている。分断をつくらない制度で学費の半額実現を」と迫りました。
 文科省からは、「コロナの影響で学びをあきらめることのないよう、しっかり支えていくことが重要。補正予算でさらなる授業料減免に国としても予算措置をしたい」と。また、休学や退学を検討している学生の調査をし、間もなく結果を発表し、追加措置の検討に入ると回答しました。
 学力テストでも応答がありました。来年度は一カ月遅れの5月に実施との回答に、「いま必要なのは、間違っても競争や詰め込みではない」「全員参加型だから競い合いを招く。調査なら抽出で十分では?」と追及すると、「保護者の意見も参考によりよい調査になるよう考えたい」と回答しました。
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