2022年5月25日 SDGs

ゲノム編集トマトの種苗を受け取らないで! (要請見本)

福祉施設や学校などでゲノム編集トマトの種苗を受け取らないよう、自治体や教育委員会に周知するよう求めましょう!

 パイオニアエコサイエンス社は、今年、ゲノム編集トマト「シシリアンルージュ ハイギャバ」の種苗をデイケアなどの福祉施設や障がい児福祉施設、自治体の担当課向けに無償配布をおこない、来年は小学校など教育施設向けにおこなうと発表しています。ゲノム編集食品はこれまで遺伝子組み換え食品に課せられていた審査や規制の対象外。無償配布されるトマト「シシリアンルージュ ハイギャバ」も、環境影響を評価する試験や食品としての安全性を確認する試験は行われていません。このような食品を子どもたちに食べさせないためにも種苗を受け取らないよう、自治体に要請しましょう。

 

↓各自治体・施設への要請見本はこちらからダウンロードできます↓

ゲノム苗を受け取らないで_要請見本

 

 

 

以下はゲノム編集食品について、新婦人しんぶん2022年4月16日号の記事となります。

併せてご覧ください。

 

「ゲノム編集食品」って何?

農民運動全国連合会(農民連)食品分析センター所長 八田純人

 

種の壁を超える 遺伝子組み換え技術

 私たちは自然の中から選抜し、掛け合わせ、品種改良をしながら農産物や畜水産物を食べてきました。戦後は科学技術の進歩とともに、効率良く品種を作り出すようになりました。その一つが、生命の情報がまとめられている「遺伝子」を人間の意図に合わせて直接操作し、生み出した遺伝子組み換え食品(1996年承認)です。さらに世界に先駆けて日本が次々と新しい品種の普及を推し進めているのがゲノム編集食品で、2019年に流通が認められました。
 生物のほとんどは、種が違っても遺伝子の構造は同じで、遺伝子はみな同じくDNAを基本として生命と種をつないでいます。今ではDNAのどこに何の働きをする情報が書かれているか、が解析できます。
 遺伝子組み換え技術は、元の生きものが持っていない遺伝子を、外から持ってきて組み込む技術です。例えば、おいしいけど病気に弱いナスと、硬くておいしくないが病気に強いナスがあった場合、これまでは「おいしくて病気に強いナス」を作るため、時間と手間をかけて何世代も交配を続けていました。ところが遺伝子の機能が解析できるようになり、病気に強くなる遺伝子をチョキンと切り取って病気に弱いナスに組み換えていれば、時間も手間もかけず、おいしくて病気に強いナスを作れるようになりました。他の生物が持っている特徴的な遺伝子を取り出して別の生物に組み換えるのが遺伝子組み換え技術です。
 こうして、自然界では起こりえない、種の壁を越える遺伝子の移動を起こせるようになりました。その結果、除草剤をかけても枯れない、虫が食べると消化不良で死んでしまう毒素を作る微生物の遺伝子を組み込んだ大豆、なたね、トウモロコシなどが食卓に上るようになっています。

 

遺伝子の機能を破壊する ゲノム編集技術

 これに対してゲノム編集は、生きものが持つ遺伝子の中の狙った部分だけを変化させる技術です。ゲノム編集の多くは、CRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)という物質を使います。2020年にノーベル化学賞を受賞した女性研究者たちが開発した技術で、DNAの狙った場所を効率良く切断することができます。
 通常、生きものの体はDNAが切断されるとそこを修復する機能がありますが、失敗して正しく修復できないことも時々起こります。するとそこの遺伝情報が機能しなくなります。クリスパーキャスナインを使うことで、この修復失敗を高頻度に起こせることができるようになるのです。

 例えば、体が大きくなりすぎないようブレーキをかける遺伝子があったとします。ここを切断して破壊し、機能させなくすると、その体をもっと大きくすることが可能になります。この遺伝子切断による修復ミスを狙ったゲノム編集操作をノックアウトと呼びます。
 ここまで聞くと、ゲノム編集も遺伝子組み換えと同じものと思えてきます。しかし、学術的、法律的には、ゲノム編集によるノックアウトは「ただ遺伝子を切断しているだけ」で、「組み換えていない」ため、遺伝子組み換えではない、と定義されました。この、違うものと定義されることに、実は大きな意味があったのです。

 

規制を受けず、表示もない ゲノム編集食品

 遺伝子組み換え食品には、開発から流通まで法律による枠組みが設けられています。生物多様性への影響を管理するカルタヘナ法、食品の安全性を管理する食品衛生法、動物の餌についての飼料安全法などに必ず届け出を行い、承認を受けなければ流通できません。さらに、私たちが買い物をする際の指標になる表示義務制度も設けられています。

 一方、ゲノム編集で開発される食品は、これらの法律の制限を受けることなく、承認も不要、届け出も任意で罰則なし、表示をしなくて良いことになりました。その結果、企業は簡単に製品を普及でき、研究と開発が過熱しています。
 しかし、ゲノム編集にはまだ技術的な課題があり、狙ったところではない遺伝子部分も切断してしまうミスが起きることがわかっています。それが予期しない変異を起こし、未知の問題につながる可能性が指摘されており、この技術の普及には慎重であるべきです。

 

すでに始まっている流通

 日本ではすでに3種類のゲノム編集食品の流通が始まっています。一つは健康成分として人気があるギャバ(アミノ酪酸)をふやしたギャバ高蓄積トマトです。トマトはもともとギャバを作る能力がありますが、成分をたくさん含む生産は難しく、ゲノム編集を使って開発されました。
 二つ目は、1・2倍肉厚になる可食部増量のマダイです。動物には自分の体が大きくなるのを制限する遺伝子がありますが、この遺伝子を破壊して機能しなくさせ、大きくなるようにしたのです。
 三つ目は、1・9倍の速さで成長する高成長フグです。動物には、満腹になると食欲抑制をする遺伝子がありますが、これを破壊することで食欲を旺盛にし、効率良くたくさんの餌を食べるようにしました。通常出荷まで2年ほどかかる養殖期間を大幅に短くでき、経済的養殖が可能とうたっています。
 実はゲノム編集トマトの普及を進めるため、障害児介護福祉施設や小学校に苗を無料提供しようという動きに、北海道の市民団体が受け取らないよう教育委員会などに働きかける動きも。さらに共食いする攻撃性を司る神経の遺伝子を破壊したサバ、アレルゲンを作らない豚、カフェインレスのコーヒー、花粉を作らない杉などの開発も取り組まれ、昨年末には大手寿司チェーン店が、今後ゲノム編集技術を用いた品種改良の共同研究を始めると報道されました。遺伝子組み換え動物の解禁には、世界でも慎重でしたが、ゲノム編集は積極的に普及が進められています。ゲノム編集の生き物による生態系への影響も心配です。
 ゲノム編集食品には表示義務制度がなく、私たちは選ぶこともできません。また、経済性や効率性のために、安直に動物の遺伝子を編集することへの倫理とともに、一企業の特許に紐付けられた生きものの食品生産が、持続可能な食卓の未来へとつながるのか、などが厳しく問われます。

 

 

 

 

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